《MUMEI》

「お前ゴルゴみたいな事言うね…」
啓太がすかさず突っ込む。
葵はそれに乗じて、うまく話をすり替えた。
「ははは。それより、今日は暑いね。」
葵が制服の首もとをひらひらさせながら言うと、和樹がにやけて身を乗り出した。
「なぁ葵、お前今日プールだから遅れて来たとか?」
すかさず美香が和樹の頬をつまむ。
「女の子は大変なの!理解しなさい。」
「なにを…!このやろ!」
和樹もすかさず美香の頬をつまんだ。
「まぁまぁ。今日はただの寝坊だから、ね?」
葵が二人の間に入ると、二人とも不服そうな表情を浮かべていた。
その時、葵の携帯が鳴った。
「彼氏か?」
優香がすかさず訊くと、葵が黙って首をぶんぶんと横に振った。
「俺が見てやる。」
和樹が携帯をすり抜くと、和樹の周りに3人がたかる。
「ただの親戚だよ。」
葵が答えて3人を見ると、申し訳なさそうに、和樹が葵に携帯を返した。
慌ててメールの内容を確認すると、いかにも紛らわしい文章が書いてあった。

仁田さん
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お前今日俺の部屋に泊まれ。

「…」
葵も押し黙って、沈黙が流れる。
「親戚なのか?」
啓太が改めて訊く。
「…違います。」
「彼氏か?」
「断じて違います。」
そこまで言うと、啓太は満足そうに頷きながら机にうつ伏せた。
「昼休み終わったら起こして。」
そう言うと、啓太は大人しくなった。

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