《MUMEI》
ホーム
次の日曜日、講習疲れで気が滅入った俺は、いつものバイク屋さんに向かった。

オイル交換をしながら旅の話をしていると、店長が
「かなり攻めとるねぇ?タイヤが限界やろ?
このサイズは良いのがないから、リアをワンサイズ細くして、ハイグリップを入れたら良いよ」
と教えてくれた。

「多分、夏が終わる頃にはチビるから、その時に良いやつ履かせるよ(笑)」

店に入るとエリカが笑顔で迎えてくれる。
支払いを終えると
「じゃあ、峠に行ってくるよ(笑)」

「うん、気をつけてね(笑)」

バイクに跨り峠に向かった。

5月も終わる頃にはかなり暑く、バイクも増えてきた。
峠に入ると、たくさんのバイクとすれ違う。

ここは俺のホームなので、コースもバッチリ頭に入っている。

見慣れたYZFーR1を見つけると後ろに付けピッタリと貼り付いた。

暫くバトルを繰り広げ、ギャラリーコーナーに入った。

バイクを降り、メットを脱ぐと、向こうはキョトンとした顔で、

「あれ〜翔君やん」
「よ〜っ、久しぶり」
「見慣れんバイクで着いて来るけん何者かと思ったら翔君やったんやね(笑)」

「悪い、悪い(笑)」

「バイク替えたんやねぇ?
12Rって、(笑)またマニアックなバイクにしたんやね、翔君らしいけど(笑)」

「やろ〜?やっと大型免許取って、悩んだ挙げ句買ったもんなぁ…でも、ええバイクやぞぉ!」

めずらしいのか、俺のバイクはギャラリーに囲まれていた。

「でも、乗り換えていきなりモノにするって…
さすが翔君やね(笑)」

「いやいや…四国に行って修行してきたんよ(笑)」

「マジで!? ええなぁ…俺も遠征に行きたいなぁ」

その日は日が沈むまで走った。

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