《MUMEI》
普通に合格
翌日は、朝早くアパートを出た。


自転車に乗って向かったのは、俺が受験した吾妻(あづま)高校だ。


(失敗したかな?)


自転車通学の生徒はいても、普通は合格発表は自転車では見に来ないようだ。


(まだ生徒でも無いのに、置いたら目立つよな)


俺は、高校の向かい側にある大型スーパーの駐輪場に、自転車を置いた。


そして、横断歩道を渡り、吾妻高校の正門をくぐり、合格者の受験番号が貼られた掲示板の前に向かった。


俺の受験番号は 154


受験者数は 450


定員…合格者は 440


(よしよし)


俺は、普通の学力の普通高校の吾妻高校に


普通に、合格していた。


…普通は、受かるから。


「お前も受かったのか?」

にやける俺を見て、隣の男が話しかけてきた。


俺と同じように、一人で合格発表を見にきたようで、付き添いはいなかった。


「…まぁね」


「じゃあ、お前の家も今夜はご馳走だな!

俺ん家、今日はすき焼きなんだ!」


どうやら、見た目普通のこの男には、普通に親がいるようだ。


…俺と違って。


付き添いがいないから、警戒していたが、隣の男が中身も普通だとわかり、俺はホッとした。

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