《MUMEI》
普通の会話
「うちはまだ決まってないんだ。肉ならいいんだけど。
羨ましいよ」


俺の言葉に男の顔が輝いた。


「なぁ、お前、何中?」


「東中(とうちゅう)」


正しくは、東武中学(とうぶちゅうがく)だが、俺は普通に略した。


「俺、南中(なんちゅう)」

(屋代さんと一緒か)


南中は、正しくは南中学(みなみちゅうがく)だったが、男は普通に略した。


ちなみに、俺は仲村さんと中学も一緒だった。


「小林 守(こばやし まもる) 小さい林に、守は、普通の、お守りとかの守だ。よろしくな」


小林君が右手を差し出した。


「田中 祐也。田んぼの中に、…」


「どうした?」


祐也の漢字を説明できなかった俺は、携帯を取り出して、漢字を見せた。


「これで、祐也」


「了解。春からよろしくなって、まだクラスもわからないけどさ」


俺が握手をするタイミングがわからず戸惑っていると、勝手に右手を握ってきた。


(触るな)


言いたかったけど、我慢した。


幸い、小林君はすぐに手を離した。


「じゃあ、また」


「おぉ、またな」


次に会うのは入学式だが、小林君なら同級生になっても問題無い人物だった。

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