《MUMEI》
春休みの失敗
バイトの面接に行くと、あっさりと採用が決まった。

丁度、今まで働いていたバイトが辞めてしまい、誰でも良かったようだ。


春休みは、ほとんどコンビニのバイトで潰れた。


慣れない仕事に戸惑い、不安にもなったが、それが普通だと店長に言われ、心底ホッとした。


毎日同じ事の繰り返しだから、日を重ねるにつれ、バイトにも慣れてきた。


俺と同じシフトになる連中は、同じ年頃のバイトもいたが、男も女も地味で目立たない俺には興味がないらしく、最低限の付き合いしかしなかった。


春休みが終わる頃に、バイト内で一組カップルが成立していたが、特に興味は無かった。


(こんなもんか…)


生まれて初めて自分で稼いだ金にも、金額にも特に感動は無かった。


とりあえず、その金で万年筆を買い、忍に送ってみた。


《どういうつもりだ》


珍しく忍が電話をかけてきた。


「初めて稼いだ金で普通は親に何かプレゼントするんだろう?」


両親も旦那様もいないから、一応、こっちで親戚という事になっている忍に贈ったと説明したら…


怒られた。


普通は、バイト代では自分の物を買わなければならないらしい。


…失敗した。

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