《MUMEI》 二十五夜 雪溶けて風吹くる◆◇◆ 卯月の始め。 芽吹き始めた若々しい緑が眩しい。 「なかなかいい日和だな‥」 雪は溶け、地には草が露を乗せている。 「あったかいなー」 ぴょこぴょこと邸から出て来た三匹の妖。 「まだ咲かないかー?」 小さな蕾を見上げ、琥鬼が呼び掛けるように言った。 桃色の花弁はまだ堅く閉じられ、開く時を静かに待っている。 ふうわり、ふうわり。 緩やかな風が、春の訪れを告げに来た。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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