《MUMEI》
路上パーキング
 二人を乗せた軽トラは街中を進む。
スピードは自動制御をされており、とてもゆっくりだ。
ミユウはそのスピードに若干の苛立ちを感じ、組んだ腕の中で指をトントンと叩いた。
「……おっそいな〜。だから嫌いなのよ、最近の車」
「仕方ないだろう」
男は困ったように眉を寄せる。
「制御装置、壊してあげようか? すぐできるよ」
ミユウが言いながら端末を取り出したが、男は慌てて「やめてくれ!」と止める。
「ただでさえ、不法投棄なんていうやばい事やってんのに。これ以上罪を増やすのはご免だ」
「ったく、気が小さいな〜」
ミユウはため息をついた。


 それから数時間が経ち、時刻は昼前。
ようやく目的地までたどり着くことができた。
「あー、肩凝った。乗り心地最悪。ミライ、大丈夫?」
軽トラから降りるミライは無表情のまま頷く。
「悪かったな。じゃ、約束通り画像は消してくれよ」
「はいはい」
言ってミユウは端末から画像データを消去した。
それを確認した男はホッと息を吐くと、そそくさと軽トラを走らせて去って行った。

「さて、と……」
首をコキコキ鳴らしながら、ミユウは周囲を見回す。
 この街で一番人口が集中する商業地域。
その地域の路上パーキング五番。
そこが待ち合わせの場所だった。
 ミライは人込みではぐれないよう、ミユウの手を引っ張りながら歩き出した。
 路上パーキングはすでに満車になっている。
その五番目のスペースに停まっているのは一台の黒のセダン。
ミユウたち二人が近づいて行くと、その運転席のドアがスッと開いた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫