《MUMEI》
入学式
入学式に一人で自転車で来るような生徒は目立つから、とりあえず自転車は合格発表の時と同じ場所に置いてきた。


クラスを確認すると、五組だった。


そこにはあの、普通の小林君の名前もあった。


「よう!え〜と…」


「田中だよ」


体育館の入口で整列していると、早速小林君が話しかけてきた。


「そうそう、田中だよな。俺、覚えてる?」


「小林君、だよね」


しっかり覚えていたが、自信無さげに答える。


「守でいいぜ!」


「じゃあ、俺も祐也でいいよ」


本当は誰にも名前で呼ばれたく無いが、相手に合わせる事にした。


「これからよろしくな、祐也」


「こちらこそ」


俺は、守に笑顔を向けた。

そして、俺は改めて一年五組の連中を確認した。


(良かった)


パッと見、目立つような奴はいなかった。


その時、守が不吉な事を言った。


「いや〜、それにしても、俺達ラッキーだよな」


ーと。


「ラッキー?」


内心ビクビクしながら、俺は確認した。


「何だ? 見てないのか? 俺達、『南のクイーン』と同じクラスなんだぜ」


(嘘、だろ…?)


守の言葉に俺は愕然とした。

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