《MUMEI》

「二郎、俺が追い詰めたんだな?」

七生の哀れんだ目が嫌。


「めちゃくちゃにすればいい。」

「馬鹿、脱ぐな!」

下から脱ぎ始めるのを止められた。

「馬鹿じゃないもん……、七生が思うより純情じゃないだけだ。」

止められた手を抓る。

「めちゃくちゃって意味分かって使ってんのか?」

「……こう?」

止めていた手の指を絡める。

「……こうだ。」

七生の擦り寄せたモノが指に当たる。
地面に膝を付いて、うなだれた頭を木に寄り掛けた。


圧倒されたのだ。

「あ……首は駄目……」

七生の唇が首に当たる程、気持ち良い麻薬的な快楽が漏れる。

「罰……なんだろ?」

七生の声が間近で聞こえるとあまりの浮遊感にぞくぞくした。
その間に手は俺の衣服を剥いてゆく。

「……あ……」

四つん這いのままで犬みたいに七生に乗られ、首を持ち上げられた。

「二郎、星が綺麗だなあ……」

本当、綺麗だ。
あ……流れ星……。

「二郎と仲直り出来ますように 二郎と仲直り出来ますように 二郎と仲直り出来ますように…………」

七生の早口はしっかり、はっきり日本語の手本みたいに言えている。

「七生……、七生は愛が冷めて無い?
俺は七生の何パーセント応えられてる?
納得行く数字がなきゃ恋人でいられない……
あれ……喧嘩したかったのに。もう分かんないや。」

七生の少し汗ばんだ皮膚やニオイは考えることを放棄させしてまう。

「一番、二郎が欲しいよ?」

良かった。俺……七生の一番のままだ。


なんだ。
俺ってば我が儘を言いたかっただけなのか。
七生があんまり相手にしてくれなくて寂しかったんだろう……


「「…………」」




ちょっと間が空いた時間に心が通った気がした。

「七生、俺……裸だよ。」

何故脱いだのか。

「そうだな。俺なんか勃ってるし……」

何故興奮したのか。

ただ七生のあんな一言をひり出す為にここまでの恰好になってしまい、笑えた。


「七生は馬鹿正直が取り柄なんだから俺にちゃんと言ってくれなきゃやだよ。」

「……ごめん。
あと少しだけ待ってくれ、絶対嘘はつかないから。」



「本当に?」

「絶対だ。」

七生の唇が声くらい優しく俺の掌を撫でた。

「 …………っ 」

震えてしまう。

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