《MUMEI》

『…どうぞ。』




とは、言ったものの…泥酔状態の私の意識は、無くなりつつあった…。




『咲良さん…
大丈夫ですか?お水持ってきます!』




『…あり…がと……。』




『飲み過ぎちゃいますか?もう寝てください…。』




『…うん。
ゴメンね…。お風呂勝手に入っていいから…。』




そう言って私は、眠ってしまった…。




次の日の朝…




『咲良さん?
おはようございます。
今日、仕事行かなあかんのちゃいます?
起きて下さい!!』




サキさんに起こしてもらって何とか起きれた…。




『…おはよう。
昨日は、ゴメンね…。
私、先に寝ちゃって…。』




『…いえ。
泊めてもうてありがとうございました。
咲良さんには、良くしてもろて、ホンマに感謝してます。
私、今日の朝一で大阪に帰ることになったんです。
やから何にもお返し出来んくて…すいません。』




『…今日の朝一!?
何で?すごく急じゃん。
明日から仕事あるの?』




『…いえ。
仕事は一週間休みもらったんです…。
ホンマはもっと、おるつもりやったんやけど…。
もうええんです!!
こっちにおる理由無くなってしもたんで…。』




『…どうして?
ももたとは、ちゃんと話出来たんですか…?』




『…それが。
私は、桃太とヨリを戻しに来たんです…。
せやけど桃太は“その気はない!”の一点張りで…。別れの理由も“俺のわがままや!”としか…。
話し合いにならんのです。私、相当嫌われてしもたみたいで…。』




『…そんな。もっとよく話し合った方がいいですよ!私も応援するし!
サキさん。
迷惑じゃなかったら、一週間、私の家に泊まってって下さい。
ももたには、一週間の長期戦ですよ!!』




私には、負い目があった…。だからサキさんには、どうしても幸せになってほしい…。




サキさんは戸惑いながらも、頷いてくれた。




『…咲良さん。
ホンマにありがとう。
私、頑張るわ!!
まずは桃太の気持ちだけでも知りたいんやけど…。
私には絶対、話してくれへんし…。
ヴー…。そやっ!悪いんやけど咲良さんに、わがまま頼んでええかな?』




『…何!?』




『咲良さんから、桃太に聞いてみてもらわれへんやろか?
“私と別れる理由。”
きっと…直接私には、言いにくいんちゃうかと思て。咲良さんになら、桃太も正直に話すと思うねん。
咲良さん!お願いします!!桃太に聞いてみて!』




『…分かった。
今日、仕事帰りももたの店に行ってみる!』




…とは、言ったものの。




仕事中も、うわの空で集中出来ない…。




『(咲良?どうした?)』




吉沢さんもそんな私に気付いて心配してくれる…けど相談出来るわけない。




『(何でもないよ。)』




これ以上…誰も巻き込むわけにはいかなかった…。




私は、サキさんが一週間泊まることが決まった時、決意していた。




“サキさんに…私がももたにしてしまったお願いを話す。”…と。




許してもらえなくてもいいから…
サキさんが、ももたとヨリを戻す為には話さないといけないことだから…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫