《MUMEI》
南のクイーン・東のキング
吾妻高校は、県内の第二通学区にあたる。


この区域に、中学は、六つある。


その中で、一番生徒数が多いのが俺の通っていた東中で、二番目が守の通っていた南中だった。


ちなみに、一年五組には、東中の生徒は普通にいたが、運良く俺の元同級生の姿は無かった。


守の言った『南のクイーン』というのは、南中の女生徒会長の事だった。


噂では、とにかく美人で頭が良くて


『東のキング』と言われた、俺にまとわりついていた東中の生徒会長とは、いとこ同士だと聞いていた。


(でも…高山(たかやま)なんて名字、女子の所に無かったぞ?)


『東のキング』は


俺の元同級生は


高山 柊(しゅう)という名前だった。


俺が守にその事を訊くと、守は『南のクイーン』は高山の父親の妹の娘だからと説明してくれた。


(なるほど)


名字の件は納得した。


しかし、まだ納得できない事があった。


「何で、明皇(めいおう)や聖華(しょうか)じゃなくて、吾妻にいるんだ?」


高山と同じ位頭がいいなら、高山と同じ明皇や、名門女子校の聖華に行けばいいのに、何故『南のクイーン』がこんな普通の高校を選んだのか不思議に思った。

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