《MUMEI》

◆◇◆

 ざ‥。

 ざざ‥。

「‥‥‥‥‥‥?」

 突風が治まったらしく、夜桜は恐る恐る薄目を開けた。

 だが。

(何も‥いない‥か)

 何事もなかったかのように、只静かな闇が広がっている。

(何だったのだろう‥今のは‥)

 あの妖ではなかろうか。

 そんな気がしていたのだが。

「‥‥‥‥‥‥」

 やはり気のせいか。

 小さく溜め息を洩らした、その時。

「随分と浮かない顔だな、夜桜」

 何もいない空間から、凜とした声が響いた。

◆◇◆

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