《MUMEI》
動揺
冷たい風が二人の頬をを撫でると、いつの間にか秋の陽も傾きかけていた…。



「寒くなってきたわね…?」


「…はぃ……。」


「ドラミちゃん、家まで送るわ…。」


「…いぇ…この時代には、帰る家なんて無いですから…。」



ドラミの少し棘を帯びた言葉に、しずかは野比家が焼けてしまったことを思い出した。


「…ごめんなさい。私ったら……無神経なこと言っちゃって…。」


「――…いぇ…私こそ…。そんなつもりで言った訳じゃないんです……。ごめんなさい。」



互いに謝る言葉だけが二人の間で虚しく交されてゆく……。

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