《MUMEI》

◆◇◆

「違う‥」

 涙を拭う事すら忘れ、夜桜は狐叉に語りかける。

「お前は‥‥何も悪くは無い‥。だから‥」

 謝らないでくれ、と彼女は言った。

 狐叉は夜桜の温もりに安堵の色を浮かばせつつ、こくり、と小さく頷いた。

(‥良かった‥)

 以前よりも狐叉の体が小さくなっているような気がしていたが、夜桜は敢えてその事を口には出さなかった。

 言ったところで、傷付けてしまうかも知れない事を悟っていたから。

 今は只、狐叉が自分の元へ戻って来てくれた事を、この上なく嬉しく思っているのだった。

◆◇◆

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