《MUMEI》
第二十九話:任務未完
 目が覚めたら朝だった。
 自分のベットの上。そして傍にいてくれたのは自分の父親の義臣だ。
 今日は顔に絆創膏一つ。
 しかし、それがおかしくないのはこの男の人柄のせいだろう。

「とうさん・・・・・」

 朦朧とする意識の中で快は呼びかけた。

「よう、目が覚めたか?」

 いつもと変わらない声。
 しかし安堵するもつかの間、すぐに快は覚醒した。

「父さん! いててて!」

 昨日受けた傷が痛む。
 とても起き上がることなど無理だ。

「無茶すんな。夢乃さんが大きな怪我だけは治してくれたが、
 完治とまではいかないらしいからな。
 それと全員命だけは助かった。夢乃さんに感謝しろよ」

 そして快を再び寝せた。
 それから少しだけ沈黙が流れた後、快は謝罪した。

「父さん、ゴメン・・・・」
「ああ、大事な戦力を危険にさらした罪は重いな。どうやって責任とる?」

 快は答えることは出来なかった。
 ただ翡翠を助けたいがために自分は動いたのだから・・・・

「快、お前が戦おうとした相手は掃除屋を潰す掃除屋だ。
 まだガキのお前達が手を出していい相手なんかじゃねぇんだよ」

 言葉の一つ一つが快の心に刺さっていく。

「それにだ、お前達は「TEAM」の看板を背負って戦うんだ。
 お前の浅はかな考えが今回の事件を引き起こしたなら、
 お前はバスターになる資格などない。
 そして覚えておけ。お前達はいつも死と隣り合わせにある。
 一人の行動が仲間を殺すことにもなるってこともだ」

 快は涙を必死にこらえた。
 しかし、義臣はそれ以上責めることはしない。
 さらりとした黒髪を撫でながら言った。

「だが、仲間を思う気持ちは隊長として合格点だ。
 そのうち母さんがおかゆ作って持ってくる。
 お前の弟が腹の中にいるってことも忘れるな」

 そう言って快の部屋から出たあと、
 快は布団の中で声をあげて泣いたのである・・・・


 それから約一時間後・・・・

「快ちゃん、お粥持ってきたよ」

 優しい母親はいつもの笑顔でやってきた。
 快の泣き腫らした目を見ても何も言わないが、それは彼女の優しさであった。

「ありがとう・・・・母さん、父さんに怒られた?」
「うん、怒られちゃったわね。
 快の弟が殺されちゃうかもしれないのに前線に立っちゃったでしょ」

 笑いながら夢乃はいう。そしておかゆをレンゲですくい、

「はい、快ちゃん! あ〜んして!」

 いつも以上に楽しそうな母親。
 義臣がいたら間違いなく怒られていただろうが、今回ばかりは甘えることにした。
 そしてお粥をかみしめながら、夢乃は話してくれる。

「本当、みんなが無事でよかった。
 それが一番嬉しかったのよ。
 それに快ちゃん、皆にお礼言っておいてね。
 助けてくれたのは「TEAM」の皆なんだから」

 水龍が倉庫を破壊する直前、
 TEAMのメンバーは間一髪のところで全員を運び出したのである。
 しかし、氷堂尊氏の姿は、それから八年間現れることはなかった・・・・

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