《MUMEI》
第三十話:任務再開
 最後の晩餐が終われば、任務まで数時間ある。
 その間少しでも睡眠をとっておくのがプロというもの。
 眠れない日が続く可能性もあるというならなおさらのこと。
 しかし、快が自分の部屋に戻ればやっぱりいた。翡翠だ・・・・

「おい、なに人のベッドに寝てんだよ!
 俺はこれから数時間眠りたいんだよ!」

 自分のベッドですやすやと眠っている翡翠を、
 襟首を掴んでポンとやわらかいソファーの上に投げる。
 そしていかにも寝ぼけた面を見せて言うのだ。

「おはよう、快」
「まったく、年頃の娘が人の部屋で寝るなってんだ!」
「だって、快のベッドはお日様の匂いがするんだもん」

 春の日差しは特に気持ちいい。
 快の部屋にはお日様がいっぱい差し込むのだ。

「とにかく寝るなら自分の部屋で寝ろ。
 医療パックはその辺に置いとけ」

 任務前に翡翠はお手製の医療パックを渡しに来る。
 それが治療兵としての仕事だ。

「快」
「何だ?」

 ベッドに入りながら答える。

「ちゃんと帰ってくるよね?
 また大怪我しないよね?
 それに・・・・遊びに行くんでしょう?」

 翡翠はさすがに不安でいっぱいだった。
 あの幼いとき、自分達を恐怖に陥れた相手と戦いに行くのだ。
 それも今回はほとんど救援なしで・・・・

「・・・・道に迷いはしない。
 怪我すりゃお前が治療すればいい。
 パフェはおごってやるから心配すんな。
 それぐらいの約束は守るからよ」

 それだけ告げて快は眠りに入っていった。
 これ以上は起こすわけにはいかない。
 任務成功率を上げるのも治療兵の役目。
 何も言わず、翡翠は快の部屋から出て行った・・・・


 そして数時間後・・・・

「それじゃ、いってくる」
「おう、死んでくるな」

 義臣にそう告げた後、快は仲間の元へと行く。

「隊長、こっちは準備OKだ」

 翔、修、白真に迷いはない。戦いの準備は完全に整った。

「そうか。だったら行くぜ、標的は「氷堂尊氏」。
 ブラッド解体のミッションを開始する」

 闇夜の中を、四つの影が動き出した・・・・

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