《MUMEI》

「なづきには描く才能がある、だから勉強と両立してくれよ。美術大学とか行って欲しいな。」
和成が言う大学なんて単語はなづきにとっては賢い人間の言語だと思っていた。

「美術ダイガク……」
まさか、自分が口に出すことになろうとは夢にも思わなかった。

「進路指導室に資料もあるよ、本州ばかりだけどさ。それだけの価値がなづきにはある。」
和成の言葉は異邦だった。

「ダイガクなんて無理だし……。」

「難しく考えるなよ。絵が好きだから絵がいっぱい描ける場所に行く、それだけのことさ。
これは、なづきのファンとしての言葉だから。」

「ファンて……」

「なづきの絵が好きだよ」
和成の正直な気持ちだった。

なづきには上辺だけの優しさに見えた。

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