《MUMEI》

「速い!!」


スピードを生かしたプレーは赤高の十八番だ。


会場はそのランパスのスピードに驚いていた。


「関谷さん!!」


「こっちだ椎名!!」


「日高さんリターン!!」


関谷、椎名、日高。


3人のランパス。


しかし、赤高のランパスは、速いだけではなかった。


「ナイッシュー!!」


日高のシュートが決まる。


先制点は赤高。


1対0。


「確かに速いな。」


試合を観戦しながらそう呟いていたのは、


海南高校エース45、千葉だった。


(速い…、が、それだけじゃない。


あのスピードの中的確にパスを出してる。


ディフェンスの位置を見て、どの場所に走るべきかを瞬時に判断してるんだ。)


「…凄いな。」


まだハンドボールのルールも理解していない安本でさえも、その凄さに思わず声を出してしまった。


「先生?初めて赤高の練習見た時どう思いました?」


「え?」


クロが安本に話しかける。


(遊んでるように見えたなんて言えないよな…)


安本が初めて練習を見た時、赤高はボール鬼をやっていた。


遊んでるように見えても仕方ない。


「遊んでるように見えたでしょ?」


「ん…」


笑いながら話すクロだが、


確信をつかれ言葉に詰まってしまった。


「先生の目には遊んでるように見えたかもしんないすけど、あの練習が今の赤高の武器になってるんですよ。」


「…?」

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