《MUMEI》

「どういうことなんだ?」


安本が尋ねる。


「わかんね〜のかよ。バカだな。」


「翔太!!だから話してるんだよ!!」


「…すいません。」


翔太は相変わらず大人への態度がなっていない。


「あの練習は、空いているスペースを見つける練習です。」


「?」


「今みたいに、ちゃんとディフェンスすれば攻撃権はうちに移ります。


それは見ていてわかりましたね?」


「ああ。」


「ハンドボールではこういう展開が多いんです。


このチャンスを物にする為に、必要な物があれです。」


「あれ?」


「ボール鬼。


あの練習では、逃げる側が攻撃。鬼がディフェンスを想定してやってるんです。


ボールを貰う為にスペースを探す攻撃。


それを阻止するディフェンス。


あれがこの展開に繋がるんです。」


「なるほど…」


ハンドボールのことを知らない安本でも、


この説明だけで理解した。


今のプレー。


そして…


クロの凄さを。

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