《MUMEI》 二十七夜 遠き日のこと◆◇◆ 「──────?」 狐叉は妙な眩しさを感じ薄目を開けた。 (月明りか‥) 知らぬ間に、姫君が自分を抱き締めたまま眠り込んでいる事に気付いた狐叉は、苦笑を浮かべた。 (‥変わらないな‥) 狐叉は、まだ夜桜が幼い頃の彩貴とのやり取りを思い出した。 ──連れて来るなと言っただろう。 ──狐叉は悪い事なんかしない。わたしの側にいるだけ。 ──いいからいう通り帰して来い。 ──嫌。一緒に暮らすの。 ──何だと‥? ──どうして? どうして彩貴は妖を嫌うの? ──‥‥‥‥。 ──彩貴には分からないんでしょ? 妖は何も悪くないって事‥。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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