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《MUMEI》 涙月◇◆◇ 秋風のそよぐ、長月の頃。 「姫様」 御簾の内で空ろな眼をしている姫君に、女房が問い掛けた。 「‥‥‥‥‥‥‥」 だが姫君は答えない。 何か物思いにでも耽っているかの如く、月を見上げたまま、じっと佇んでいるのである。 呼びかける女房の声も、その耳には、最早聞こえてはいないらしい。 その姫君の名は、神夜。 思うのは、いつもあの君の事。 （竹千代‥） 一筋の涙が、つう、と頬を伝う。 ◇◆◇ 次へ |
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