《MUMEI》

「ん。天才。」

出来上がったのを誇らしげに口に運ぶ。
多分、作るよりも食べるのが好きなんだな。

「……旨い」

思いの外、繊細な味付けだった。

「だろ?」

もっと誉めて欲しそうだったが止めておく。

「いつでも嫁げるようにはしてるから。
あ、片手大丈夫?」

スプーンまで渡されて流石に食べれないことは無い。

「……飲んでいい?」

やけに落ち着き無いと思った。

「二杯までな。」

多分、是清は食べるのが好きで食べながら呑むのが更に好きなようだ。
いそいそとグラスを取りに行った。

日本酒を差し出される。

「未成年なんだけど。」

「舌慣らしだって、ちゃんと飲みやすいやつだし。
もう、一人で飲みたくないんだ。」

あまり口に出したく無かったのか、グラスの方を見ていた。

「寂しいんだ?」

素直だから、付き合ってやってもいい。

「兎だからな。」

「…………は?」

何故に兎…………

「うわ、今ジェネレーションギャップが……」

是清の様子からだと笑うとこだったようだ。

「グラス綺麗だ。」

碧と朱の半透明なグラスに日本酒がゆらゆらと揺らめいていた。
朱のグラスを是清は喉越し良く飲み干す。

「琉球グラスだからな、本当なら泡盛が良かったんだけど。」

新しく注ぎ込み二杯目を煽った。

「早いな。もう二杯目だ。」

ちびちび舌を浸して飲む。

「違うって、乙矢が二杯飲み終わるまでだろ?」

……そうまでして飲みたいのか。

「公園のときみたいに飲んだら幻滅するからな……」

あんな介助はもう勘弁だ。

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