《MUMEI》

「………ふっ」

これを乗り越えたら、彼に会えるかもしれないじゃないか…。

それに歩いているのは日本の整備されたアスファルトの上で、あのガタガタの石畳ではないからそんなに疲れないだろうし。

このまま行くと大きな庭園がある。

緑の多い方へ歩いているので空気もいいだろう…。

そう自分に言い聞かせると、また歩みを進めて行った。




「ありがとうございました」

数件歩き回ってやっと見つけた。

多分…きっとそうだろう。

明るそうな好青年で、アキラと年の頃も多分同じぐらいの後ろ姿で、チョコレート色の髪でツンツンな髪型、身長も多分同じぐらいだろう。

何より抜群にスタイルが良い。

その事だけは、この目でも身体でもはっきり覚えていた。


ー 心が燃えていると、頭の働きが煙で鈍る ー

か…。※ドイツのことわざ。

一番最後に見つけた花屋にまさか居るとは…。

それに、この花屋の近所にある大使館には何度も来ていたじゃないか…。

あの時、あまりにも彼と一緒に居るという事に夢中になり過ぎて、彼の事を聞きそびれていた。

もっともっと身の回りの事とか聞いていれば、こんな事も無かったろうに…。

店の閉店時間をなんとなく遠くから確認すると、彼の仕事が終わるまでまだ少し時間があるようだった。

はやる気持ちを抑えつつ、近くの喫茶店に入ると時間まで色々な計画を練りながら彼が終わって帰る時間まで待っている事にした。




「ピンポンちゃん、もうおねむかな?」

彼は店先にある意味ありげな壷に何か話しかけている、不満な事でも言っているのだろうか…。

その割には笑顔だ…可愛らしい笑顔…。


結局、待ちきれずに花屋の側まで来てしまった。

彼の姿、一挙手一投足を見るだけで魅力的でドキドキしてしまう…。

もうそろそろ閉店の時間になるので、彼は店先を掃除して店じまいの準備をしていた。

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