《MUMEI》
クイーンの待ち伏せ
(ラッキー)


サッカー部の練習を見学に行く三人を見送りながら、俺の顔はにやけていた。


拓磨は真司に比べれば、顔は普通だが、丸北でレギュラーだった拓磨は、それだけできっと人気があるだろう。


そんな拓磨が、俺にかわって津田さんの隣に座っても、誰も文句は言わない。


幸い、俺にはもっともらしい理由もあるし。


(これで、少しは安心だな)

俺は、正門を出…


「た〜な〜か〜、…君っ!」


「うわぁ!」


(な、何でいるんだ!?)


至近距離に、とっくに帰ったはずの、津田さんの笑顔があった。


(しかも、後ろ、増えてるし…)


美人の母親の隣には、お洒落な…多分、父親がいた。

「どう? 龍平(りゅうへい)」


「うん…」


?


龍平と呼ばれた父親が、俺を見つめる。


それは、津田さんが俺を見ていた時の視線に似ていた。


そして…


「うん、確かにいい身体してるね」


…同じ事を言われた。


「でしょう? 父さんもそう思うでしょ!」


「わ!」


(くっつくな!)


俺は慌てて津田さんから離れた。


「あら、手強そうね」


津田さんの母親が楽しそうに笑った。

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