《MUMEI》
五月二日 月曜
 飛び石連休の狭間で今日は角南クンは学校に行ったようだ。そして三時頃、二人で歩いて帰ってきた。
 新婚さんの様に楽しく話ながら連れ立って。
 そして部屋に入ってしばらくすると、がたがたと粗大ゴミやら燃えないゴミを出し始めた。
「えーっ!これも捨てなきゃならないのか!」
「そんながらくた、よく持ってたね!捨てなきゃ、俺、もう来ないよ!」
 二階の寝室にすわと駆け込んで、聞き耳を立てているわたいには中の様子がよく分かる。これぞわたいの妄想力さ!けけけ!
 角南クンが両手に何か抱えてるのか、足でドアを開ける音。
 そうか。二人の愛の巣を作ってるのだ!

 この間、差し入れに行った時、角南クンの寝室をちらと見たら、そこら中に本やらCDやら昔のレコードやらが散らばって足の踏み場もなかったっけ。骨董品の蓄音機、捨てさせられたな。わたいでもまず片づけさせるね!でも、引っ越すって言ってきたらどうしよう・・・家賃下げるか!
 最後に掃除機の音。
 わたいはちょっと意地悪する事にした。身体が勝手に動く〜!がはは!

 とんとんとノックすると、しばらくして角南クンが出てきた。シャツの裾がジャージのズボンから出ている。急いで着たのだ。わたいの顔を見るとびっくりした。寝室の戸からりんクンが顔を出してわたいにお辞儀する。顔が上気している。何か悪いことやった子供みたい。くっくっく。かわゆい!何をやっていたかお見通しだぜ!
「何か大掃除してたけど・・・まさか引っ越しするんじゃない?」
 角南クンはまたびっくりして、
「ち・・・違います!その・・・梅雨が来る前に少しさっぱりとさせようと・・・」
「ご免ね。大家として心配になって聞いちゃった」
「ご安心下さい!引っ越すような金、全く無いです!」
 にこやかにお互いに笑って別れ、わたいは急いでまた寝室に駆け上がった。
(ああ・・。びっくりした!大家さんに感づかれちゃったと思った)
(ふふ・・・感づかれたら嫌?俺たちってそんなに悪い事してる?大介、やっぱり後ろめたいんだ)
(・・・違うよ!でも知られたらお前が恥ずかしい思いをすると思って)
(・・・俺、恥ずかしいと思わない!そんなんならもう会わない!)
(ま・・・待ってくれ!俺はそんなつもりで・・・)
 あ〜あ、もうりんクンの尻に敷かれてるわ。りんクンは真っ直ぐで強い。でもあの日は泣いていた。・・・だから守って上げなきゃ。角南クン、苦労するわね。

 案の定、しばらくすると激しい息遣いが聞こえて来た。そして二人の絶頂の喘ぎ。

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