《MUMEI》

◇◆◇

 姫君は涙し、微笑む事を忘れていた。

(竹千代‥)

 彼が、戻って来てさえくれたら。

 そうすれば、この袖を涙で濡らす事はないのに。

(何処にいるの‥?)

 お願い。

 戻って来て。

 もう一度、姿を見せて。

 私は貴方を待ってるから。

 あの月を眺めながら‥。

◇◆◇

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