《MUMEI》
十二月一日 土曜
この数ヶ月、わたいの生活は充実していた。角南クンとりんクンの愛の関係を、少しでも垣間見れたのはわたいにとって一生の宝になるはずだ。
・・・こう言うのも、今日で彼らの愛は終わったからだ。
夕方、わたいは庭に出ていた。りんクンのバイクが駐車している辺りの草をしゃがんで刈っていた。すると角南クンの部屋からりんクンが出てきて早足で階段を降りてきた。
りんクンは、しゃがんでいるわたいに近寄るまで気が付かなかったみたい・・・彼は泣いていたから。バイクスーツのジッパーを胸の辺りまで開けたままで、片手の甲で涙を拭いながら駆けてきた。ぽたぽたと涙は頬を伝い顎の辺りから下に落ちていた。
やっとわたいに気付いて顔を上げて立ち止まった。
わたいが腰を上げたので彼のバイクへの行く手を遮った形になった。
「あ・・・」
「りんクン、ど、どうしたの?具合でも悪いの?」
りんクンは情けなさそうな顔を向けた。そして新たな涙がそのきれいな瞳から溢れ出た。
「・・・俺たち・・・終わりました・・・」
「へっ?・・・」
「・・・分かってました。管理人さんが時々俺たちの様子を伺ってたのを・・・俺たちがホモだってこと知ってたんでしょ?」
「ホ・・・ホモだなんて・・・そんなこと思っちゃいない!」
わたいは本気で言った。腐女子が同性愛を差別するか!男女の仲よりずっと透明で崇高な関係なのよ!
「喧嘩したの・・・?」
りんクンは鼻水をすすった。
「大介は俺を精液処理係にしてたんです!」
わたいはぶっとんだ!
「そんなこと・・・あんなに愛し合ってたんじゃない・・・あ」
口を慌てて塞いだが自ら認めてしまった。
「そいで・・・俺の夢を否定したんだ!あんな奴とは思わなかった・・・」
わたいは声が出なかった。
「・・・本当にお世話になりました。俺、イギリスにサッカーをしに留学します。もうここへは来ません」
「ほんとに・・・?」
「あいつ・・・きっと自棄になって生活荒れると思います・・・だからあいつを・・・気にしてやって下さい!お願いします」
りんクン!最後にそれは健気すぎる!やっぱり貴方は角南クンを好きなんだわ!
彼はぺこりと頭を下げるとバイクに跨った。
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