《MUMEI》
十二月八日 土曜
あれから角南クンは部屋から出てこない。
りんクンと一発触発なことは以前にもあったけど、今度は声を掛けても答えないのだ。確かに失ったものは大きい。わたいもこれからの人生の楽しみの一つが無くなった。でもりんクンにあそこまで言わせるなんて、角南クンも責任重大だ。
でも夕方そそくさと出かけていった。少しは何かを期待しているような様子だった。きっと顔を見る機会があるんだわ。
しかし十二時頃帰ってきた時はぐでんぐでんに酔っぱらっていた。声が聞こえるので出てみると階段のところで角南クンが突っ伏して大声で歌っている。下手糞なので原曲が分からない。
旦那に手伝って貰って彼の部屋に連れて行った。
「あ・・・り・・・がとう・・・ごじゃいましたっ!」
寝室のベッドに座らせると操り人形のように首を前後に振ってそう言った。
わたい達が側の机に水のコップを置いてドアを閉めるまで、そこに座り込んだまま動かなかった。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫