《MUMEI》
キング登場
その男の美しさは次元が違う。


キャーキャー騒ぐような、レベルを超えている。


恐れ多くて、近寄れない。

微笑まれたら、有り難くて拝みたくなる。


そんな、神が降臨したかのような、美形。


高山柊は、そんな、キングと呼ばれるのにふさわしい男だった。


伝統ある学ランに身を包んだその男は、よりによって、俺の自転車の隣にいた。

「やぁ、田中君。久しぶり」


平凡なデザインのブレザー姿の俺に、有り難い笑顔を向けながら、高山は俺に話しかけてきた。


「…久しぶり」


普通は、無視はできない。

たとえ、どんなに、周囲の視線が痛くても。


「どうして、ここに?」


「丁度、吾妻高校に行く用事ができて、親にここのスーパーの駐車場まで送ってもらったんだ。
そうしたら、君の自転車によく似た自転車見かけてさ、名前書いてあったし…
だから、待ってた」


「用事って?」


(もしかして、津田親子と待ち合わせか?)


「どうして卒業式、出なかったんだ?」


俺の質問を無視して、高山が逆に質問してきた。


「いつもの腹痛だよ」


俺は笑顔で答えた。


「今、どこに住んでるんだ?」


高山の質問が続く

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