《MUMEI》 ◆◇◆ 「怪我でもしたのか」 彩貴が姫君の衣から僅かに覗いた手首を見るなり言った。 夜桜は裂いた布を手首に巻き付けていたのだ。 衣で隠れている為見えないが、布は手首のみならず腕の方にまでも巻かれている。 痣を隠す為だ。 何も語ろうとしない夜桜に、彩貴は再び同じ事を尋ねた。 躊躇しながらも、夜桜は徐に口を開く。 「いや、大した事は無い」 「きちんと手当てをした方がいい。見せてみろ」 「‥‥‥‥‥っ」 夜桜は戸惑った。 もしも万一、妖が関わっているのだとしたら。 「どうした」 「何でも無い。枝が掠めただけだ」 夜桜は逃げるように邸を飛び出した。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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