《MUMEI》
告られた?!
夏海は普通科の生徒。  隣のクラスは商業科。  
奴は商業科。
奴に限らず、他のクラスの男子とも、仲良くなっていた。仲良くなることは夏海は、たやすいことなのだ。
お互い朝から、よく会う。途中の道から学校まで自転車で登校だから。

「うぃーす」
「あぁ、おはよ」
奴のあいさつは、全て、言葉じゃない。      おはようは、うぃーす  さよならは、うぃ    話し掛けるときは、よっ 返事は、おっ

それくらいの、音でも、話は出来る。会話も短いし。奴は、バスケットを中学からやっていて、高校でもバスケットに所属。    夏海は、帰宅部。他の言い方をすればバイト部。
だから、帰りはあまり会うことはない。

「何のバイトしてんの?」「………」
「ん?」

いきなり、朝の下駄箱から長身で痩せの奴が、上から日本語を口にした。   夏海は初めて聞いた言葉のように、とまどった。
「あんた、しゃべれたんだ」
「あぁ?」

「だって、あぁとか、うぅとか、しか、あんた、いわないじゃん。」
「あぁ……」
やっぱり、奴は日本語を口にしなさすぎる様だ。  「……で、今、なんて、しゃべったっけ?びっくりして、聞いてなかったし」
「ばいと」
「あぁ、バイトかぁ、でも、なんで、あんたに言わなきゃならない?理由は?しゃべってみ!?」
夏海はとにかく、しゃべらせたかった。二人で階段を上がる。
「あぁっ?」
仕方なくしゃべる。
「………………おまえが気になるから…………」
奴はポツリとしゃべった。奴はポツリとしゃべった。奴はポツリとしゃべった。奴は、学校の、階段で、上がりながら、他の生徒が、行き交う中、ムードも、何もない、演出の、中で、夏海に告白をした。
奴はポツリとしゃべった。奴はポツリとしゃべった。
「あぁ?」
今度は夏海が日本語をわすれ、あぁ としか、言えなかった。いくら、鈍感な、夏海でも、告られたことはすぐ、理解出来た。   でも、教室についてしまったので、それ、以上、会話しないで、無言で、それぞれの教室に入った。

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