《MUMEI》
見られてたャャ
初めて聞いた言葉。   奴は日本語をしゃべった。日本語なのに、初めて聞く言葉。
夏海は授業も上の空で、1日中、トイレ以外は、教室で過ごした。
全ての授業が終わり、バイトに行こうと、教室を出る。
「おぅ」
〈ゲッ、奴だ。〉
奴の声が後ろから、聞こえた、それは、夏海へ発した、声だと、わかる。     ふりむく
「何?」
またしても、廊下を二人で歩き、階段を下りる。
「俺、一応、告ったんだけど、つきあわない?」
「あぁ?!」
奴は、開き直ったのか、恥ずかしさももたないで、日本語を、たくさん、しゃべってくる。
「俺さぁ、一目惚れかも、チャリで、走ってる、お前みてて、なんだか、いいなぁ、って、それだけ、なんだけど。あとさぁ、いつだか、公園で、花に群がる、蝶や蜂、ずっと、眺めてだだろ?変な奴とか、おもいつつ、俺はお前を眺めてたんだ。虫が、好きなのか?」
一気に奴はしゃべった。それも、あの公園で、バイト前に、虫を眺めてた、自分を、見られてたなんて。 急に恥ずかしくなった。
下駄箱についた。
奴は、バスケットをやりに、そこから、部室に行くのだ。夏海は、バイト部に行くのだ。それでも、奴は、まだ、しゃべる。
「なんか、虫みてる、お前が、変でさぁ、かわいいとか、って、一目惚れじゃないけど、なんか、興味あってさぁ、でも、虫見ながらニヤケテル、笑顔はよかったよ。で、虫好きなのか?で、つきあう?」
「好きでもないのに、つきあえないし、今までどーりでいいんじゃない? で、今朝の質問だけど、〇〇コンビニ。じゃ、五時九時だから、いくわ。あと、虫は案外好きかも。」 
「おぉ」
夏海は逃げるように、それだけ言って、バイトに向かった。奴は、部活に向かった。
自転車をこぎながら、気付いたらバイト先。
〈何あいつ?はずかしいなぁ、あんなとこ、見られてたなんて、あん時は、小学生時代思い出して、虫をみてたんだっけ。まじ、はずかしいし。〉
なんだか、気付いたら高校生になっていて、虫だの、空だの、太陽や月、夜空を眺めてない、自分に気づき、あの日は、花に沢山の群がる蝶をみていたのだったのだ。

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