《MUMEI》

「王様、御覧下さい。くまさんですよ。」

ローズが直したくまを差し出した。

「これ……呉れるの?」

王はローズから繕われた縫いぐるみを受け取る。

「はい、もう要らないなんて言わないで下さいね。
この世界に要らない物なんてありませんから。」

ローズは満面の笑みを浮かべた。
王もそれに応える。
二人の心が通い合った瞬間だった。

王は躊躇いながらも口を開く。

「…………ねぇ、祭があるんだ。」

「お祭りですか?私を招待して下さいます?」

にこやかに笑いかけるローズに反して王の顔は蒼冷める。


「――――是非、お待ちしておりますよ。」

召使が王を迎えに来た。


「ローズ……有り難う。」

王は寂しそうな視線を一瞬送り、召使に手を引かれて行く。

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