《MUMEI》 「啓太、もう少ししゃがんで。」 啓太の頬をつまんで、葵が下に引っ張る。 「こう?」 「うん。」 次の瞬間、啓太が硬直した。 啓太の視界が葵に遮られ、啓太の唇が葵の唇で塞がれた。 付き合ってる訳でもないただの悪友からの、いきなりのキス。 啓太は、葵が唇を離した後も、状況を理解出来ないでいた。 「抱きしめてくれたお礼!ありがとうね啓太、あたし元気出たよ。それじゃ…」 「待て!」 「え?」 両腕を掴まれ、壁に押し付けられる葵。 「迷惑…だよね。こんな勝手な事して。」 葵の声が少し震えて、涙が滲む。 「でも、あたしの今を残したかった!だから…ごめん。もう行くね?」 啓太は、初めて見る葵の表情に、戸惑いを隠せない。 フェンスをこえて、葵が見えなくなっても、その場に立ち尽くしていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |