《MUMEI》
それぞれの放課後
その日の放課後。


「あ〜、まだ耳、おかしいわ」


「俺も」


最後に紹介された軽音楽部の気合いの入り過ぎた演奏を思い出し、俺と守は苦笑した。


「なぁー、祐也は部活どうするんだ?」


「やらないよ。バイトしてるから」


「そっかー」


俺の普通の言い訳に、守と真司は普通に納得した。


吾妻高校は、部活は強制では無いし、バイトも許されていた。


それでも、守達三人のように、中学と同じ部に入る連中は結構いた。


「ねぇねぇ津田さん」


「…何」


拓磨は積極的に津田さんに話しかけていたが、津田さんは露骨に嫌がっているようだった。


「拓磨も頑張るよな〜」


「な〜」


それでもめげない拓磨を見て、守と真司は感心していた。


拓磨は、南中に練習試合に行って津田さんを見かけて一目惚れしたらしく


拓磨の津田さん好きは南中と丸北では有名らしかった。


そして、早くもクラス内でもその事は知れ渡っていた。


(あれだけ露骨ならわかるか)


「津田さんの為なら何でもするとか言ってたぞ、あいつ」


(何でも、ねぇ…)


『俺、…が悦ぶなら、何だって…する』


『祐也…』

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