《MUMEI》 下手な言い訳「祐也?どうした?」 「え? あ、…」 (しまった) 守の声で現実に引き戻された俺は、慌てて言い訳を探した。 しかし、結局すぐに思いつかなかった俺は… 「悪い!バイト遅れるから帰るわ!」 とにかく帰る事にした。 「お? おぉ」 「またな」 (大丈夫だったかな?) 振り向かずに、守と真司に手を振りながら、俺は冷や汗をかいていた。 今日から俺は、吾妻高校の敷地内にある駐輪場に自転車を置いていた。 自転車に飛び乗り、バイト先のコンビニへと向かう。 「まだ早いのに…どうした?」 「…あれ?時間、勘違いしてました」 更衣室で息を整えながら、俺は休憩中だった店長に愛想笑いをした。 本当は、早いのはわかっていたが、放課後の失敗と不意に蘇った過去の記憶を振り払う為に、俺は、必死でペダルをこいでしまっていたのだった。 「ホレ、汗位拭けよ」 「あ、ありがとうございます」 俺は店長からタオルを受け取った。 「ゆっくりでいいからな」 店長はそう行って、レジに向かっていった。 俺は、誰もいない事を確認して、前髪をかきあげ、額の汗を拭いた。 前へ |次へ |
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