《MUMEI》
三十夜 とり憑きし詛
◆◇◆

 程なくして、夜桜は女の姿に化けている狐叉の腕に抱かれ、邸へと戻って来た。

 彩貴は邸の前に立っていたのだが、姫君を抱いている女を見て目を円くした。

「誰‥だ‥?」

「すぐに床の支度を」

 彩貴は驚きつつも女に言われた通りにした。 

 姫君を床に寝かせると、時折苦しげに呻く彼女の袖を狐叉が捲る。

 巻かれている布は所々墨が染み付いたかのように染まっていた。

 しゅるり、と狐叉がそれを解くと、彩貴が小さく声を上げた。

 布の巻かれていた部位。

 そこには、蔦が巻き付いたかのような螺旋が、くっきりと浮かび上がっていたのである。

◆◇◆

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