《MUMEI》
第三十五話:平々凡々の意地
 風は火の威力を強くする。
 この世の中の常識を覆したのが自分の父親。
 「TEAM」の幹部である片岡航生。
 だが、息子はいたって平々凡々。
 そんな芸当はできるわけがないのである・・・・

「風木霊!!」
「火炎!!」 

 風と火は激突する。力はほぼ互角。
 しかし、相性は最悪だ。

「あぶっ!!」

 間一髪で翔は黒焦げを回避した。
 風使いはスピードが命だ。
 当然、翔のスピードは速いほうである。

「ほらほら! さっさと避けないと死ぬわよ!」

 桃子が繰り出す炎弾を無駄な動きなく翔は避ける。
 翔の動きのパターンはやはりブラッドの幹部だけあって心得ていた。
 昔、自分を殺そうとした猿柿より強い。
 いや、レベルそのものが違う。それだけは確かだった。

「切り返すか・・・・」

 少し翔は桃子から距離をとると、放たれた炎を一気に風の力で切り返した!
 
「火炎竜巻!」

 今まで翔に放たれていた炎が桃子に戻るが、

「あまい!」

 さらに炎の威力をあげて翔に放たれる。

「おっと!」

 それを避け、翔は一定の距離をとった。

「どのみち勝ち目はない!さっさと死になさい!」
「やだね。俺は平々凡々なりの意地があるからよ、
 やっぱり負けるわけにはいかない」

 そして空間から出てきた一本のナイフ。

「換装?」
「少し違うな。召喚だ」

 言ったと同時に桃子の胸にナイフが突き刺さる!

「ぐはっ!」

 刺されたというより噛まれたといったほうが正しい。
 自分の肉を少しずつ食べられている!

「人食いナイフ。俺が得意とする召喚の一つだ」

 やけに絶望的に聞こえた。
 自分の五感を完全に支配されたのだ!
 
「この勝負俺の勝ちだな」
「ぎゃあ〜!!」

 桃子の体は完全に消滅するのだった・・・・

「・・・・なんてな。俺は幻術も得意なんだよ。
 それに人食いナイフなんか存在したらTEAMの掟破りで殺されるんだよ。
 戻れ、まねまね!」

 そして出てきたのは鉢巻に藍色の半纏を着た小人サイズの親父だった。
 咥えキセルがこの召喚のチャームポイントらしい。

「・・・翔、我はわしになんて変化させとんやねん!」

 早速出てくるのは文句。
 翔は少しだけ悪びれた表情を浮かべ、

「仕方ないだろう。今回は相手が相手なんだ」
「関係ないわ! もっと平凡は平凡らしい戦い方せんかい!
 風を使うだけ使って人の五感を支配するなど、
 お前の親父さんの戦法じゃろうが!」

 召喚したものにまで平凡といわれてしまう自分が何となく悲しい。

「・・・・お前、本当俺を主人として認めてるわけ?」

 その言葉を残し、勝敗は決した。
 勝者、片岡翔・・・・・

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