《MUMEI》

「動くのが早いな。」


「練習試合ですらタイムアウト取るような人だったからね。」





「少し早いけど…


あれをやる。」


「あれ?」


「オールコートマンツーだ。」


「オールコートマンツー!?」


オールコートマンツーとは。


通常6メートルラインに沿って守るディフェンスが、中央ラインから自分のマークマンにつく移動型ディフェンス。


通常は後半ラスト5分程の場面で、逆転のチャンスを狙って行うディフェンス。


相手の攻撃パターンを崩す、カットすれば速攻の展開に持ち込みやすい。


などの利点があげられるが、リスクの大きすぎるディフェンスだ。


1人抜かれれば1点取られるという展開に繋がりやすいからだ。


そして何よりも…


「前半からオールコートマンツーなんてやったらスタミナ持たないすよ!!」


そう。
疲労だ。


機動力が武器の赤高に速攻の展開に持ち込めるオールコートマンツーは有効な手段かもしれない。


しかし、少数精鋭の赤高がこの時間からオールコートマンツーを行うのは、賭けであった。


「有効な手段がないんだ。

ここで離されるわけにはいかない。


ペース配分を考えて勝てる相手じゃないことはわかるだろ?」


「…わかりました。」


「よし。


マークマンはポジション毎でいいよ。


ただし、椎名。」


「はい?」


「お前は千葉に付け。」


「え?」


「ボールは見なくていい。


千葉だけを追うんだ。」


「はい!!」


「ピー!!」


「よし!!行ってこい!!」


「はい!!」

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