《MUMEI》 ゆったりと部屋を周りながら品物を眺め歩いた。 「君の部屋はどうなのかな」 誉は林太郎に挑戦的な嗤いをする。 林太郎には自信があった。 扉を開くと立ち込める芳香、若芽が床や調度品の中に一見、散らばっているように見えるがそれは満遍なく香るように計算された配置だ。 間引きされた華は林太郎の手によって美術品の一部に成った。 そして、集結してゆく花びらの中心には美しい貴婦人…… 「無い…………」 何処からともなく声が漏れた。 肝心の絵画が消えていたのである。 前へ |次へ |
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