《MUMEI》
酒と火薬
穏やかに過ぎる夕暮れ時。
「それでよー、そん時の女がさー、殺した奴の嫁だったんだよ!」
澤田は完全に、泥酔状態。
「はははは!それでその女もやったんだろ?」
仁田はほろ酔い状態で、普段と違うキャラになっている。
一方、葵は少しの酒で、深い眠りについていた。
だが、家の外では事態は急展開していた。
スーツ姿の男2人が、家の玄関を開ける。
その音で、仁田と澤田が同時に拳銃を握った。
仁田に寄りかかって寝ていた葵をソファーにもたれさせると、澤田が蹴破った座敷から、仁田がスーツ姿の男に上段蹴りを入れる。
しかし相手もプロ。
すぐに体勢を整え、拳銃を抜こうとする。
その手を、銃弾が弾き飛ばす。
廊下の突き当たりには、澤田が立っていた。
続けざまに2発。
スーツ姿の男の一人が、崩れ落ちた。
「クソがぁっ!」
もう一人のスーツ姿の男は、玄関から逃げ出そうとする。
再び発砲音が響いて、玄関先で、男は動かなくなった。
「ぐ…っあ。」
右手に1発、太腿に2発銃弾を浴びた男は、玄関でもがく。
仁田はその男を仰向けに押さえつけて、銃口を押し付けた。
「依頼元は?」
「殺せ…」
乾いた発砲音。
男は、声にならない悲鳴を上げる。
左手の中指が、なくなっていた。
「どこの組だ?」
「あ、藍沢組だ!頼む!助け…」
再び乾いた発砲音。
今までもがいていた男は、壊れた人形のように、ピタリと動かなくなった。
仁田の背後に立つ澤田の拳銃から、煙が立ち上っていた。
「藍沢組か…」
仁田も立ち上がって、拳銃を腰に隠した。
「厄介な事になって来た。」
2人の声が重なって、静かな部屋に消えて行った。

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