《MUMEI》 ◆◇◆ 「あれから‥何とも無いか」 「ああ‥」 僅かに躊躇うような口調で夜桜は答えた。 「どうかしたのか」 夜桜が複雑な表情を浮かべている事に気付き、狐叉が尋ねた。 夜桜は痣の消えた腕を袖の上から左手で擦りつつ、口を開く。 「あれで‥良かったのだろうか」 「‥?」 「あの痣をとり憑かせたものが妖か霊かは分からないが‥今までそれらの犠牲になる事は構わないと思っていた‥。だがあの時‥私は抵抗していた‥。何故だろう‥」 「夜桜‥?」 「生きていたいと思ったんだ‥あの時」 「それは真っ当な考えだと思うが」 「そう‥なのか」 ああ、と狐叉は頷いた。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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