《MUMEI》 三十二夜 語りける琵琶◆◇◆ 「綺麗な音だな」 狐叉が近付き、曲を弾き終え弦の音を確かめていた娘に話しかけた。 「貴女は‥‥人‥?」 「一応な」 盲目の娘に答え、狐叉は苦笑した。 「よく来るのか」 「はい、私は‥ここで琵琶を弾いて暮らしてるんです」 娘は、にこり、と微笑んだ。 その表情がどこか夜桜に似て見え、狐叉は思わず見入っていた。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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