《MUMEI》
確信
そんな事を思い出していると、残りの2台が帰ってきた。

(R6とCBR954か…)
2台が後ろに来るのを確認し、コースに入った。

上り、下り共に中盤にはミラーから消えていく。

(免許取り立てか?
決して遅くは無いが、そのバイクのポテンシャルはもっと高いぞ!!)

そう思いながら峠を後にした。

実家に帰ってからも、白いRVFが気になっていた。

(あの後売られ、今まで走り続けてきたのか?
もしかすると、全くの別物かも知れない。

まさか、俺の息子か?
二十歳になる息子が乗っててもおかしくはないが…)

夕方になり、どうしても気になった俺は、親父のカブとヘルメットを借りて、元妻の実家に向かった。

向かったと言っても家の前を素通りし、白いRVFの有無を確認するだけだが。

近づくにつれ、段々と緊張してきた。

自分の中には有って欲しい反面、有ってもどうする事も出来ない。
という複雑な気持ちでいっぱいだった。

あと50メートル先を左折した所が、元妻の実家だ。

取り敢えず気持ちを落ち着ける為、コンビニに入り、缶コーヒーを買ってベンチに座った。

タバコを吸いながら、気を落ち着けていると、重低音のエキゾーストが響いてきた。

その瞬間、俺の体中に鳥肌が立った。

ハッとして目をやると、それは白いRVFだった。

通り過ぎた後すぐに、減速する音が聞こえた。

その瞬間、
(悠一…)ふと呟き、俺は【確信】した。

俺が残したバイクを十数年後、息子が乗り継いでくれた。

俺は、感動のあまり、目に涙を浮かべながら実家に戻った。

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