《MUMEI》 手夏海は、母に浴衣をかってもらった。小学生の時は、ピンクや赤の金魚の浴衣。中学では、着る機会がなかったので、小さくて着れなくなっていた。 少し地味だが、藍色を主とした、少し大人びた、浴衣を買ってもらった。 それを、着て、夏祭りへと、出かけた。 奴は、生成りの甚平を着ていた。お互い、見慣れないので照れ臭かった。 甚平から伸びる足は、痩せすぎるくらいの細さだが、筋肉はしっかりと、ついていた。 夏海は高校に入ってから、髪を伸ばしていたので、おだんごにしていた、それも、母にやってもらった。 「似合うじゃん、みかけによらず、今日は足広げてあるけねーな」 「え?私、足広げて歩いてる?」 「まあ、少し、がに股かもな、チャリ漕いでるときは、すごいよ、みえそうて。まあ、他の女子も、そうだけどな。スカート長い奴らは、逆にチャリ、大変そうだよな。」 「案外、女ばかり、みてんだ、俺は興味ありませんって顔して。」 「今どきの男は、それが、正常。女に興味がない男は異常。だろ?」 「まあね」 会話は弾む。奴は、私にはたくさん話してくれる。あまり、他の女子からは、評判はよくない。なぜなら、しゃべらないから。 人ごみをかき分け、カップルと家族連ればかりの中を突き進む。 奴は、何も言わず、夏海の手を握る。 (そういえば、千明が、言ってたなあ、夏祭りで必ず、手を握るって。なぜなら、人込みは、離れちゃうから。定番よっ!って。) そんなこと、思いながら、繋いだ手の中は、汗ばんでいた。初めて手をつないだのだから。 花火があがる。人込みをかきわけ、夜店を行く。 「虫好きなら、金魚も好きだろ?とるか?」 「金魚とっても、今、うちで、飼えるかなあ。」 「無理なら俺が飼う。夏海は、それ眺めて、にやけてれば?」 「まだ、言うか!確かに虫を眺めてにやけてました!!」 そう、言って、金魚を一回で10匹もすくい上げた。 「器用なんだね、顔に、にあわず」 「あぁ?!」 楽しかった。会話もはずんだ。二人はまた、手をつなぎ、金魚と、帰宅した。また、帰りも花火をみながら、人込みに突っ込んで行った。 もちろん、手は汗ばんでいた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |