《MUMEI》
出前
一通り、屋代さんの事を俺から聞き出した後。


「ねぇ、もしかして、料理はしないの?」


希先輩は、俺の私生活について訊いてきた。


希先輩の視線の先には、ガスの元栓があったが、ホースやガス台は無かった。


「ひょっとして、前と同じ食生活?」


ずっと希先輩の横顔ばかり見つめていた高山が、口を開いた。


高山の言葉に俺が頷くと、希先輩が首を傾げた。


「希さん、ちょっと」


高山が、小型冷蔵庫の前に座り、希先輩を呼んだ。


希先輩が隣に来ると、高山は、少し赤くなりながら、冷蔵庫の扉を開けた。


「何これ!」


希先輩が、飲み物とゼリー飲料しか入っていない冷蔵庫を見て叫んだ。


「俺、料理出来ないんで」

(そんなに変か?)


普通、男は料理は出来ないし、飲み物ばかりな冷蔵庫も珍しくないと俺は思っていた。


「これは、祐の出番ね」


希先輩は携帯を取り出した。


「あ? 祐? 今日の課題、チャーハンだったわよね。それ、田中君のアパートに持ってきて。三人前ね」


そして、数分後。


「どうも〜、お待たせ!」

三人前ではなく、自分の分も含めた四人前のチャーハンを持った祐先輩が現れた。

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