《MUMEI》
邪魔者
(あ〜あ…)


俺は、露骨に落ち込む高山を見つめていた。


本当なら、昼食は近くのコンビニで済ます予定で、俺が部屋に残り、高山は希先輩と二人きりで出かけるはずだったから。


「何だ、柊。泣くほどうまいか」


「はい、おいしいです…」

高山は、半分ヤケになりながら、チャーハンを食べていた。


「祐也も早く食えよ!」


(馴れ馴れしいな)


「…いただきます」


俺は、祐先輩が料理人のおじから合格点をもらったというチャーハンを口に運んだ。


…味は悪く無いし、素人にしてはうまいと思う。


「どうだ?」


「おいしいですけど、今あんまり腹減ってないから後で食べます」


「そっか…」


期待していた答えを得られ無かった祐先輩は、シュンとしていた。


(だって…どうせ、吐くし)

俺の胃はあの日以来、固形物を拒絶していた。


最後に俺が食べ物を美味しいと感じたのは…


『祐也は何でも美味しそうに食べるね』


『だって、…と一緒だから』


去年の事なのに、遠い昔の事のようだった。


「ねぇ、私はあんまり来れないから、祐、たまに出前してあげたら?」


だから、希先輩の提案は、丁重に断った。

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