《MUMEI》
仮病
夕方、賑やかな三人がようやく帰ってくれた後、俺はいつものように忍に報告メールを送った。


『ちゃんと断ったんだろうな。これ以上目立つなよ』

『わかってるよ』


『明日は、…わかってるな』


『わかってるよ』


俺は、忍とのやり取りを終えた後、携帯の電話帳を検索した。


(…やっぱり守かな)


真司は、意外と頭がいいし、拓磨は野生の勘が鋭そうに思えた。


俺は、守の携帯に、電話をかけた。


《もしもし、祐…って、お前、どうした?》


俺は、守が電話に出た途端、咳込んでいた。


(もうちょっと、続けるか)

《風邪か? 大丈夫かよ。…おい!》


「ご、ごめ…」


俺はわざと小声で言って、また咳を繰り返した。


《大丈夫か?》


(よし)


守が本気で心配した事を確認した俺は、本題を切り出した。


「一日、…寝てれば、治るから…」


また、咳込む。


《わかった!担任には俺から言っとくから、もう喋るな!》


「あ、ありが…」


《だから、喋るな!ゆっくり休めよ》


「ん…」


(これで、よし)


俺は、どうしても明日は学校を休まなければならなかった。

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