《MUMEI》

◆◇◆

「あの‥夜桜姫様」

「‥?」

「姫様は妖がお好きなんですね」

「ああ‥」

 夜桜は少し照れたように笑った。

「奏美、お前は‥」

「私も好きですよ」

「そうか」

 夜桜は奏美を見つつ、つくづく自分に似ている、と思う。

「奏美は‥ずっと祇園で琵琶弾きをしているのか」

「はい」

 そう答え、奏美は苦笑した。

「私は‥‥これ位の事しか出来ませんから」

「奏‥美‥?」

「こんな私でも‥誰かを幸せに出来ると思うと嬉しいんです」

 奏美は愛しげに琵琶を抱き締め、夜桜に笑いかけた。

◆◇◆

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