《MUMEI》 ◆◇◆ 「ここが‥夜桜姫様の‥」 「ああ、文机でたまに文や日記を書く位の場所だがな」 夜桜は苦笑を浮かべて答えた。 大抵狐叉や雪兎達に囲まれて一日の大半を過ごす為、文机に向かったり床を敷いたりする以外は、夜桜はあまりここにはいないのだ。 「姫様は‥妖が見えるんですよね」 奏美の問いに、夜桜は頷いた。 「赤児の頃からだ。私の周りには‥常に妖がいた」 「狐叉という七尾は‥」 「狐叉は私が最初に見た妖だ」 夜桜は、ふと懐かしげな表情を浮かべた。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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